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記憶の中継地点「海馬」を一人でトレーニングできる「辞書脳トレ」

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頭を使わないと短期記憶が衰える

中高年を過ぎると、会話中に言葉が思い出せなくなり、「アレ」「ソレ」といったあいまいないい方をすることが増えてきます。また、文章を書いていて適切な単語が思い浮かばず、四苦八苦することも少なくありません。これらは、記憶力の低下を示す重大サインです。

記憶力の低下は、すなわち脳の衰えを意味します。とりわけ、記憶の中継地点というべき脳の重要部位「海馬」の衰えが顕著といえるでしょう。

そもそも、私たちがさまざまな情報を引き出し行動できるのは、短期記憶の一種である「作動記憶」(ワーキングメモリ)という特殊能力のおかげです。

作動記憶とは、何か行動をするさいに、頭の中にごく一時的にとどめておく超短期的な記憶のことです。新しく見開きしたことはもちろん、長期記憶から引き出した情報も、目的を達成するまでの短時間、作動記憶として保存されます。

専門的には、作動記憶がとどめられることを「記銘」といい、海馬の重要な働きの一つと考えられています。また、海馬は、脳のほかの部位と連携して記憶を短期貯蔵庫にとどめ(保持)、思い出す(想起)という働きも担っています。

こうした記銘・保持・想起がスムーズに行われることによって、私たちはスラスラと言葉をしゃべったり、意図した行動をしたりできるわけです。

問題は、頭を使わないでいると海馬が衰え、記銘力障害を起こしやすいことです。

記銘力障害とは、ほんの数分も記憶を保持できず、想起することもできない状態のこと。前述のように会話の中で「アレ」「ソレ」が増えるのは、記銘力障害に陥っている恐れが大きいのです。

海馬は年齢に関係なく鍛えることができる

記銘力障害が起こりやすいのは、情報をいったん海馬に記銘した直後、全く関係のないことに注意を向けたときです。

例えば、眼鏡を棚の上に置いた直後、友人から電話がかかってきたとしましょう。すると、海馬が衰えている人は電話を切ったあと、眼鏡をどこに置いたのか思い出せなくなるのです。

もっとも、海馬は使わないでいると衰えやすい反面、よく使うほど能力の高まることがわかっています。脳には神経細胞どうしをつなぐネットワークがあり、それを強化することで海馬はもちろん、脳全体が鍛えられるのです。しかも、脳の神経細胞のネットワークは年齢に関係なく鍛えることができます。

そこで、海馬の機能回復に特に役立つ「辞書脳トレ」を紹介しましょう。

病院で行う記憶テストを応用

辞書脳トレは、言葉当てクイズをやるような感覚で行う、新しい脳のトレーニング法です。

具体的には、①辞書に書かれたある単語の意味の説明文を暗記し、②説明文を紙で隠し、③次に簡単な暗算問題に解答して、④再び単語の意味の説明文を復唱し、⑤最後に単語がなんなのかを答えます。

この辞書脳トレは、記銘力障害の疑われる患者さんに行う診断法「5つの品物テスト」をもとに考案されました。

5つの品物テストでは、まず患者さんに5つの品物の絵を見せ、それぞれの名前を暗記してもらいます。次に「昨日の夕食のおかずはなんでしたか」「昨夜はどんなテレビを見ましたか」といった無関係の質問をします。それに答えてもらつたあとで、暗記した5つの品物の名前を復唱してもらうのです。

そのさい、五つの品物の名称をすんなりと復唱できれば問題はありません。しかし、いくつか(あるいはすべて)の名称を思い出せないようなら記銘力障害の疑いが濃厚です。

一人で気軽にできる海馬のトレーニング法

5つの品物テストでポイントとなるのは、品物の名称を覚えたあと、関係のない質問に答えることです。患者さんの脳内では、関係のない質問をされると海馬と脳のほかの部分が連携して品物の名称を保持しようとします。

しかし、海馬の働きが衰えている場合は、関係のない質問をされると注意をそがれ、5つの品物の名称を忘れてしまうのです。

5つの品物テストでは、記銘・保持・想起をまんべんなく行えるので、海馬の働きを向上させるトレーニング法としても打ってつけです。何度もくり返し行えば、しだいに記憶力アップが期待できるでしょう。

ただし、5つの品物テストは患者さんと専門家が二人一組になる必要があるので、万人が試せるわけではありません。

そこで、一人で気軽にできて、なおかつ5つの品物テストと同じように海馬をトレーニングできる方法として、辞書脳トレが考案されたというわけです。

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