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普段から手や指を動かすことは、脳を活性化する有効な手段

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脳の活動を外から観察する画像装置

自治医科大学付属病院副院長の渡辺英寿先生は脳神経外科医として治療に携わる一方、医療機器の開発・研究にもカを注いできました。

その成果の一つが、1995年に開発した光トポグラフィー(近赤外線照射装置)です。これは、近赤外線という目に見えない光を使って、脳の局所的な血流量の変化をとらえ、脳の活動を画像で見られるようにしたものです。

今回は、光トポグラフィーを用いた実験で確認できた、手や指の動きと脳の血流量の変化についてご紹介しましょう。

実験に触れる前に、まず光トポグラフィ一について説明しておきます。

光トポグラフィーの開発当初、渡辺先生たちがまず行ったのは脳機能のマッピング(地図化)です。

脳のマッピングというのは、脳の各領域の役割分担を明らかにすることです。脳は分業で働いており、口の動き一つをとっても、唇を動かすのはここ、あごを動かすのはここというように、脳の場所ごとに担当が分かれています。

こうした脳の分業体制を、地図に見立てて明らかにしたのは、カナダの脳外科医ペンフィールドです。

ペンフィールドは、脳表面の各所に電気刺激を与えて被験者の脳を観察し、手や足、目、口などの運動や感覚などの働きが、脳のどの場所と関係しているかを解明しました。

ただし、ペンフィールドは、脳が活動している様子を外からは観察することはできませんでした。生きている人間の脳が活動している様子を体の外から観察することは、長い間、科学者の夢でした。光トポグラフィーは、この夢を実現した技術の一つです。

脳の血流が等しく増えるのを実験で確認

近赤外線は皮膚や骨を通り抜け、血液中のヘモグロビン(赤血球の赤い色素)に吸収されやすいという性質があります。

この性質を利用して、頭に近赤外線を照射し、戻ってきた光から脳の血流量の変化を読み取ることで脳のどの部分が活発に活動しているかがわかります。

脳の血流量の変化をとらえる機器には、光トポグラフィーのほかに、PET(陽電子放射断層撮影装置)や、ファンクショナルMRI(磁気共鳴画像)がありますが、どちらも被験者が静止していなければなりません。

一方、光トポグラフィーは、頭に計測用のヘルメットを着け、自由に動き回ることができる画期的な装置です。

では、光トポグラフィーを用いて、指の運動に対する脳の血流反応を調べた実験を紹介しましょう。

5人の被験者には、手や指を意識的に握ったりそらしたりなど、自由な指の運動を30秒続けてもらいました。そのときの脳の様子を解析画像で見たところ、被験者が指を動かし始めると、脳の中心周辺の血流が同時に増加しました。血流は運動開始から約8秒でピークに達し、運動終了後にはすみやかに低下しました。

血流量が増加した部位は、従来の脳の地図で示されている手の指の運動機能の場所と一敦しています。

一般にいわれている、手や指の運動が脳の血流量を著しく増加させることが、改めて確認できたというわけです。

手を動かすと脳の広い領域で血流量が増える

この実験結果は、私たちの日常生活にも役立てることができます。

体を構成する細胞のほとんどは、「使わないと萎縮して働かなくなる」という性質があり、これを廃用性萎縮といいます。脳の神経細胞も例外ではなく、使わないと萎縮して脳の活動は低下してしまいます。

脳の地図を見ると、手が占める領域はたいへん広いことがわかります。手や指を意識的に握ったりそらしたりすれば、脳の広い領域で血流量が上がります。血流量が多くなるということは、その一帯の細胞活動が活発になっているということです。

普段から手や指を動かすことは、脳を活性化する有効な手段といえます。

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